絶倫少年(仮)・幕間1


「ねえ、お兄さん……」
話しかけてきたその子は可愛かった。
しかし、僕には彼女がいる。
だから……丁重に断ろうと思ったのだけど。
「ちょっと、おなかが急に苦しくなってしまって……あなたの家で、少し休ませてくれない?」
そういわれると、むげにも出来なくて。

「ああんっ! すごい……気持ちいいわっ!」
「ううっ……君こそ、すごいよ、もう……とろけそうだ……」
看病してる内に、事故(てちがい)で……彼女の胸の谷間を見てしまってから。
気がつくともうこんな事になってしまっていた。
だけど、彼女のあそこはすごく気持ちよくて……
「ごめんなさい、彼女がいるのに……甘えてしまって」
「いいんだ。あいつより、気持ちいいから……」

「……そうか?」
「えっ……!?」
冷酷な声にふと振り向くと、枕元に、見知らぬ男と、彼女……キャスカが立っていた。
「だそうだ。人間。聞いたか……」
そんな男の問いに、彼女は唇をきゅっと結んだまま。
「……君は、私に契約した。彼氏が不貞を働けば……私の意志に従うと」
「……はい」
震える声で、彼女はそういった。
「なら、契約成立だ。おい……ファナ、もうその男の相手はいい」
「えっ……」
僕の上で気持ちよさそうに腰を振っていた彼女は……
「はい、解りました……ご主人様」
涼しい顔に戻ると、僕の上から降りてしまった。

「おまえは、後で……かわいがってやるからな、ファナ」
「はい」
その男はそういうと、キャスカに手を掛ける。
「ふふっ……震えているな。自分の男の前で身体をさらすのは……さすがに罪悪感があるか? ん?」
「……」
それはそうだ。
彼女は……男に声を掛けられることが多かったが、不貞を働いたことはなかった。
かなり貞操観念の強い女なのだ。
「だが、そう気にすることはない……
 五分後には、自らの意志で、夢中で腰を振っているのだから」
「なっ……!?」
さすがに、そう言われて彼女も絶句する。
そして、俺は気がついた。
今まで……唖然として、それとキャスカの前でいたたまれない気持ちで動けなかったのだが……
身体に不自由があるわけではないのに、その男に近寄ることが出来なかった。
キャスカに手を伸ばし……服を剥こうとするその男につかみかかりたかったのに、
近づけない。
金縛りではない、動くことは出来る。
なのに、その男の方に体が進まないのだ。

「ほら、男が見てる前で……裸になってしまったよ? どうだ? 今の気持ちは?」
「……彼が、一度くらい過ちを犯したからって。私は……」
「そうか、うん……いいね。その強気……心がくすぐられるように心地いいよ」
嫌らしい笑みを浮かべ、男は彼女の腰に手を回す。
「あの男に、君の気持ちを吐露してもらうから……ほら、こっちにお尻を向けて」
男は椅子に腰掛け……股間のものを露出する。
それは……悪魔のような――いや、本当に悪魔だと後で知ることになるのだが――
見るからにおぞましいイチモツだった。
普通の人間の倍近い太さ、長さを持ち……
その肉茎には、びっしりと……
まるで真珠を埋め込んだような、いや無骨な歯車のような凹凸。
「ひっ……」
そんなものを入れてしまえば……彼女の女性自身は直ぐに機能を破壊されてしまうだろう。
そう思われるのに十分な外見だった。
「ほら、大丈夫。痛くない……」
そして、からだが凍るような笑みを浮かべて。
「これ以上なく、気持ちよくしてやるから」

その瞬間を、俺は一生涯忘れないだろう。
その男は、彼女の……まだ濡れない陰唇に指を入れ……
くっと開くと。
そのおぞましき亀頭をあてがう。
そして、ゆっくり。
キャスカの腰を沈めさせる。
最初はそうしていた。
抵抗に震えるキャスカの腰を、押さえつけるように。
しかし、いつの間にか、男の手は腰に添えられてなかった。
なのに。
くちゅっ……
「!?」
はじめは幻聴かと思った。
だが、よく見ると……男の激しい凹凸のある亀頭の隙間から……
確かに、粘性のある液体が確認できた。
というより……
じゅっ、ちゅっ……
「(溢れてる……?)」
キャスカの身体に、朱が差したように感じられた。
いや、もう……クリトリスはめくれあがり、
乳首とともに勃起しきってる……!?
「ああっ」
キャスカの腰が男の太ももに着き――信じられない事に、肉棒はすべて埋没していた――
言われるでもなく、キャスカは腰を持ち上げ始める。
それは、逃げるようにも見えた。
だが、もう……男には解っていたのだろう。
案の定、彼女の腰は、膝が伸び切るくらいまで浮き上がると、
激しい勢いで、沈み込む。
ぐちゅっ!
あの痛々しい肉棒に、信じられないくらいの激しい動き。
でも、彼女は止まらない。
ぐちゅっ!
ぐちゅっ!
ぐちゅっぐちゅっ!
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅっ!
「あんっ! ああっ! すごい……すごいのぉっ!!」
「どうだ、俺の……肉棒の味は?」
「いいっ! すごくいいっ! こんなの……はじめてっ!!」
「あの男のと、どっちがいい?」
「全然っ! 比較にならない、こっちの方が断然いいですっ!」
「おいおい、おまえは……あの男を愛してるんじゃないのか?」
「あんっ! それとこれは……別です、だって、気持ちよくて……」
「じゃあ、おしまいにしようか。愛のないセックスはするべきではないだろう?」
「いいえ、それならあなたを愛します! あの男なんて……もう、どうでも、いいですっ!!」
「えっ……」
彼女は、俺を愛してやまなかった彼女は……
俺の、些細な過ちで……その愛情をあっさり手放してしまった。

「あんっ、あああっ……いいのおっ!! もっと、もっとしてっ!!」
キャスカの告白を聞いて、その男は……自らの手で、キャスカの腰を上下させる。
下腹部に、身体の内部から肉棒の凹凸が見えそうなほど、
ごりごり……とこすりあげているにもかかわらず、
キャスカは、もう……数度、気をやり、だらしなくよだれを零していた。
上下するたび、首がガクガク揺れ、
接合部からは、溢れるように女の愛液がこぼれ、床の水たまりをその都度広げている。
脚は、時折、忘れたようにピン、と張り詰め……
正体無く、ふらっと脱力、を繰り返す。
そんな彼女を見つめる俺の心中には……
思い出のデートが浮かんでは、割れるような胸の痛みを感じさせながら消えていく。
そして、男に対する殺意を募らせては……
身体が自由にならない絶望感に打ちひしがれる。
その度に、男は満足そうに舌なめずりをして……
「あふっ、ああっ……」
絶頂し切り、正体無く、糸の切れた人形と化したキャスカを、
男は床に投げ捨てた。

「くっ、貴様……っ」
「何か不服か? 俺は、彼女の要望で陰茎を提供したまで。
 望み通り犯し、望み通り絶頂を味わわせただけ。
 おまえの恨みを買う理由はないだろう?」
「ぐっ……こ、この悪魔め……」
俺は、何も言えずにそこに膝を突いた。
「今頃気付いたか?
 俺は、正真正銘の悪魔。
 おまえ達みたいな浅はかなカップルから、その絶望を糧にして生きているのだよ」
「……!!」
そう、俺は……まんまと填められたのだ。
文字通り。
「行こう、ファナ。帰ったら、おまえをかわいがってやる」
「はい……ご主人様」
二人は、きびすを返し……なんの感傷もなく立ち去った。
俺は、俺は……
「あふ、気持ちいいのぉ……ああ……」
置き去りにされ、床で快楽の残滓に痙攣するキャスカに手も触れず。
「聞こえてないかもしれないが……
 正気に戻っても、もう二度とここに来ないでくれ」
そう言い残して、家を出た。

「今日もよく働いてくれた……ほら、来いよ」
「はい、ご主人様」
ファナは部屋に入ると、服を脱ぎ捨て、生まれたままの姿をさらす。
そこはもう、しとどに濡れていて……
いや、残念ながらあの男のせいではない。
男の彼女……キャスカとの交わりを傍観し、
そして家に着くまで……
ただ、待ち焦がれてそうなっていたのだ。
そして、ベッドに腰掛けて待つ悪魔の膝に乗り、
向き合ったまま、その細い指先で、あのグロデスクなものを、その決して大きくない秘所に迎え入れる。
くちゅ……
「んっ、ああ……」
その花心は、大きな亀頭に広げられ、
それでもけなげに……びらびらをめくり込まれながら、くわえ込んでいく。
「ふぅ、やっぱり……おまえのは具合がいいな」

悪魔にとって……女と性器を接触させることは、たいした快楽ではない。
人間の、親密な男女の、
その仲を引き裂くことにより生じる嫉妬、落胆、そして……禁忌的な快楽におぼれる刹那的な感情を、
この上ない甘露として味わうことが、悪魔の快楽、そして生きる上での糧となっていた。
だから、褒美として彼女に愉悦を与えるためにこうして身体を重ねるのだが、
ファナと交わることは、肌を撫でられて気持ちいい程度の快楽に過ぎない。
しかし、ファナの性器は……こうして悪魔のイチモツをくわえ込み、順応しながらも、
それでいて人間の……たいした大きさでないイチモツにも、分け隔て無い快楽を与えられる。
それは……彼にとってこの上ない幸運だった。
彼女に会うまでは、それこそ苦労して――悪魔は人間に嘘をつけないので、誘惑するのも一苦労なのだ――
見つけた女を使い捨てにしていた。
悪魔が折角仕込んでも、普通の人間の女性器では、使っている内に簡単にがばがばになってしまうのだ。
でも、このファナは……もう何人と無く男を落とし、その間褒美と調教のため、悪魔が自身でかわいがり、
それでいて、まだ処女のような締め付けを保っているのだ。
だから、彼女と交わると……気分がいい。
彼女と出会えた幸運を、
そして、これからも……容易に人間どもの純愛を摘み取ることの出来る喜びを、
噛みしめながら、丁寧にファナをかわいがるのだ。

「ああっ……いいです、すごい……ご主人様が、最高ですっ」
「そうか? あの男と……最後までしたかったんじゃないのか?」
少し意地悪な質問をする。
いや、でも答えは分かりきっているのだ。
「あんなに気持ちよくしてあげたのに……全然、私を悦ばせてくれなかったから……」
ファナは、軽く腰を浮かせる。
悪魔の肉棒に貫かれながら……これだけの理性を保つ許容度もすばらしい。
「こんなに、たくさん……濡らせてしまいました」
肉棒のイボイボの隙間に、彼女の少し乳白色がかった愛液が絡みつく。
上下するたび、そのイボは嫌らしくテカりながら、彼女の愛液を掻き出していた。
「何を言う。今日の……キャスカとやらに比べれば、大人しいくらいだ」
「私だって、最初は……ご主人様に、たくさんかわいがられましたから」
悪魔も、彼女を……どんな男が来ても落とせるように、性戯のもてるところすべてを教え込んだのだ。
昼も夜も、それこそ……理性を失い、腰を振るロボットになるくらいにまで。
だから、こうして、悪魔を楽しませる事が出来る。
その、成長結果を見るのも、ささやかな楽しみであった。

「ああっ、どうですか……ああっ、ご主人様っ」
「ふふっ、相変わらず、可愛いやつだ。ほら……ご褒美をやるぞ」
「出して……私の、奥に……はち切れるくらい浴びせてっ、ああああっ!!」
ファナが悦ぶように、意識が飛ぶ直前に。
熱く煮えたぎった悪魔の精液を子宮めがけてはき出す。
どくっ、どくどくどくどくどくっ!!
「ああっ、すご……いいいっ!! たくさんっ!! あ……ふぅうううううっ!!」
人間と違い、精液が止めどなく溢れ、子宮を蹂躙していく。
その流れの激しさと、とどまることの知らない勢いは……
慣れたはずのファナをして、恐怖に戦慄き、打ち震えさせ……
そして、それが快楽に塗り替えられ、頭を隅々まで白く塗りつぶしていく。
「あふ、はふはふはふっ……くはっ……」
やがて、過呼吸に意識が飛び、首がうなだれても、
精液の勢いは止まらず……彼女の子宮をふくらせ、外見にまで顕わにする。
「ふふっ、ふぅ……どうだ、気持ちよかったか?」
軽く、そのふくらんだ下腹部を押すと、意識を失ったファナが……
ぴくぴく、と内股が痙攣させて答えていた。

「それで、次は……どんな男なのですか?」
「ああ、ディズル……と言ったかな。女の名はユリア」
「ふぅん……」
別に、その男女に興味があるわけではなかった。
ただ、ナンパされるときに、相手に合わせるためにこうして少しだけ素性を聞く。
何度も繰り返された問答だ。
「今日の男よりは……がたいは良さそうだから、少し楽しむがいい」
「もう、意地悪です……ご主人様」
悪魔には、彼女が不服に思うことはもうすでに解っていた。
何しろ、自分が仕込んだ女のだ。
簡単に、満足するはずがない。

「ふぅん……あの男?」
近くの街に赴き、悪魔から聞いていた外見を頼りに、男を捜す。
情報通り、夕方になるとその男は酒場に現れた。
しらふでは、警戒されやすい。
だから、少し時間を使って、自分も軽くアルコールを含み、
少しふらついた様子を演じながら、彼の席に近づく。
「ちょっと、お兄さ……」
しかし、驚いたことに……たいした時間も経過していないのに、彼は泥酔していた。
「んあ、なんだ? ん……たいした上玉……じゃないかぁ」
そのもの言いに、不審なものを感じながら……簡単に落ちるかも、とほっとする。
「こんな時分に、そんなにお召しになったんですか?」
「なんだとおっ!」
が、軽く話を合わせようとすると、男は逆上してしまった。
「きゃっ!!」
「おまえもっ! おまえも俺をバカにするのかっ!!」
「あっ……」
あまりの逆ギレに、どうしていいか解らない。
それは、かえって演技で近づいていることを露呈してしまっていた。
「くそおっ! 少しくらい可愛いからって、いい気になりやがってっ!!」
「(ど、どうしよう……)」
うろたえ、後ずさる彼女の背中に、たくましい男の胸が当たる。
「あっ……」
「ファナ、こいつはいい。ここは……出よう」

「あいつは、振られてしまったらしい」
「ふら……れた?」
別に不思議なことではないはずだが、ファナは驚いていた。
それというのも、悪魔の探す人間のカップルというのは……
だいたい順風満帆な状態であることが多いからだ。
破局したときの嫉妬、落胆が大きいほど、悪魔の得る悦楽が大きいのだから、
それは至極当然と言えた。
「どうも、彼女を寝取られたらしい。それも……まだ女を知らなかった坊やに」
「……」
理由を聞いて、納得した。
そう、事故なら……事故のようなきっかけなら仕方ないのだろう。
しかし、悪魔にとっては……そうたやすく割り切れることでは無いようであった。
「人(あくま)の獲物を横取りする人間とは……恐れ知らずもいいところだよな?」
「……ええ、その通りです、ご主人様」
その時の、残忍な笑みに、ファナは久しぶりに背筋が凍るのを覚えた。
悪魔が大事にする数少ないものの中の一つに……プライドがある。
もし、人間が彼のプライドを損なうことがあれば……
あらゆる手段を駆使して、代償を払わせるのだ。
「ファナ、だから……今日は、これからそいつのところへ行って、その男を骨抜きにしろ」
「……ご主人様。でも、その女性と、その少年は……」
「おまえの好きなように楽しめ、と言っているのだ。喜べ」
女と恋仲ではない少年を破滅したところで、悪魔は何の糧も得られないはず。
それでも、悪魔の冷たい表情は変わらない。
まだ、女を覚え始めたばかりの少年に、
自分のような技巧を知り尽くした女をあてがい、破滅させる。
ファナの技巧を持ってすれば……
その、悪魔を楽しませる技巧を用いれば、
二度と、ファナ以外の女に満足しない体に改造されてしまうだろう。
いや、あるいは、途中で廃人と化してしまうかも知れない。
悪魔は、本当に容赦がない。
「……はい、解りました」
だから、せめてすべてを忘れて。
せめて、その少年を喜ばせて……
少しは、本当に『少しは』自分も楽しめればよい、
そのときの彼女は、そう……思っていた。



(続く)
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