絶倫少年(仮)・幕間5


「次の方……」
教会の懺悔室。
信者の……いや、そうでない人間も後を絶たず、礼拝の後、列を作る。
「すみません、私……収入が不安で、つい、隣の店の商品を……」
「そうですか。それでは、神の御名を唱え、謝罪の言葉を3度……」
街の治安が不安定になり、つまらない罪を犯す人が増える。
そして、そんな彼らは、その罪悪感にあらがえず、教会に救いを求める。
神父は、そんな彼らの罪を許し、二度と犯罪に手を染めるな、と誓わせるのだ。
「神父様……」
懺悔室のドアがノックされる。
「シエスタか」
「そろそろ代わりましょうか。昼からずっと休み無しに、お疲れでしょう?」
「ふむ、しかし……まだ日も落ちてないな。もう少しすることにしよう」
「でも、夕食も近いですよ?」
「儂は、後でいただくよ。今日は人が多い。
 おまえには、少し遅くまで相手してやって欲しいからな」
「そうですか……解りました」
シエスタは、懺悔室を後にする。
「それにしても、今日も……多いわね……」
ここのところ、懺悔の人は多い。
それにしても、今日はいっそう多い気がする。
町の人の噂では、皇后陛下が失踪したとかで、不安になっている人が多いのだろう。
「また、戦争とか……起きないといいけど」

礼拝堂に入り、十字架の前に進み出る。
跪き、天井を見上げると、今日もそこには……女神アフロディーテの美しい裸身があり、
シエスタをほほえみながら見下ろしている。
その人の手で作られたとは思えない美しいステンドグラスは、
裸身の肖像にもかかわらず、信者はやましい心を忘れ、ただただ救いを求め、手を合わせる。
「女神様、私たちの、この世界は……どうなってしまうのでしょうか」
その中でも、シエスタは……数多くいる神父やシスターの中でも擢(ぬき)んでて信心深いと評判で、
それでいて美しい外見に、神父ですらため息を漏らしてしまうほどだった。
しかし、それを目当てに教会に来る信者もいるにもかかわらず、
彼女の説教を聞くと、信者は皆、心を洗われたかのような表情をして帰って行く。
普通シスターに懺悔を任せることはあまりしないのだが、
あまりの評判に、そして間違いのない彼女の説法に、
神父もたびたび彼女に懺悔を任せるようになっていた。

今日も、アフロディーテのステンドグラスは、
シエスタの上に、美しい輝きを落としていた。
その光には一片の淀みもなく、
彼女の将来を祝福している……様にしか見えなかった。

(続く)
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