絶倫少年(仮)・幕間6


「あ、朝……」
ファナは目を覚まして思う。
自分の呪われた身の上を。
そして、これからずっと味わわされ続ける、自分の罪の深さを。
その贖罪を。

物心ついたときには、すでに自分は身寄りのない人間だった。
明日もしれず、
物乞いのような毎日。
その頃は何でもしていた。
自分には人間らしい尊厳もなく、
ただただ、
自分の命を繋ぐのに精一杯の毎日。

そんなとき、彼は現れた。
悪魔。
いや、自分にとっては、彼は天使だった。

最初から解ってはいた。
彼が自分の身体目当てであることは。
しかし、彼と出会って、私の生活は一変した。

彼に抱かれる毎日。
彼の言うまま、男に抱かれる毎日。
それは、普通の人間にとって娼婦とさほど変わらない生活。
しかし、私にとっては天国だった。
彼に、男に与えられる快楽、体温はさほどの問題ではなかった。
明日がある。絶対来る。
それが分かっているだけで、私は幸せだった。
なのに。

私は悪魔を捨ててしまった。
たいした意味を持たない、快楽を失っただけで。
その代償に。
いや、もしかして……悪魔が身体目当てだった代償とでも言うのだろうか?
「ディアボロ……」
彼は、真名を教えてくれた。
彼と、私は、ずっとうまくやっていける。
そう言って、彼は自分だけに、本当の名前を告げてくれたのに。

「ヒューイ、いないんだ……」
目が覚めて、彼に抱かれるまでの短い時間。
私はそのつかの間だけ悪魔を想い、涙する。
しかし、今日はヒューイがいない。
「ディアボロも……いないんだよね……」
勝手なのは分かっている。
自分は、ヒューイの与えてくれた快楽を選んでしまった。
だけど、誰もいないとき。
想うのは……ディアボロの、冷たく、大きな……

「ああっ……ディアボロ……」
もう二度と、あの大きな物で蹂躙されることはない。
私の気持ちも顧みず、私を追い詰めてくれる、あの冷徹で、たくましい物は……もう。

「そう、ディアボロ……って言うんだ」
そんな時、背後で冷たい声がした。

「えっ……」
背中を冷たい物が撫でる。
悪魔の真名は……決して知られてはならない。
もう、彼はいなくなったけれど、
それでも、罪の意識が彼女に襲いかかる。
「あたしにも教えてくれなかった真名……こんな人間風情に、教えてたんだね……」
ファナの背中には、リリスの冷たい視線が突き刺さっていた。

リリスと、ディアボロは……かけがえのない仲間同士、のはずだった。
リリスはディアボロを失って、それでもまだ気づいていなかった。
彼女は彼を信頼していただけではなくて。
決して交われなくても、彼女は、彼を愛していたことを。
交われない限り、進む運命は決まっている。
だけど、彼女はそれを受け入れていなかった。
それは、まるで、肉親の兄を愛してしまった妹のように。
生物の法則がそれを定めても、それにあらがうように。

「ねえ、知ってる?
 悪魔は、人間に真名を知られると、生殺与奪権を握られることを
 でもね……」
リリスの瞳に冷たい光が宿る。
それは、まるで……
「魔族に列する者は、それだけじゃない。
 その存在をも、奪うことが出来る」
リリスの股間が隆起し、そこに、さんざん見た物が現れる。
黒々しく、大きく、
ごつごつして、冷たいはずなのにまるで熱を帯びたような。
「こんななんだ。あいつの、女を狂わす武器。
 えげつないね。
 自分の股間に付くと、良く解るよ」
リリスの笑顔が怖い……
「ヒューイのペニスに負けたとは言っても、これはまさに悪魔だね。
 こんなの入れられたら、普通、
 二度と人間のなんか入れられないよ」
ファナは、ヒューイの物でもないのに、
自分の身体が熱くなるのを感じた。

「あぐっ……あああああっ……」
それは、そのまま……ディアボロの物だった。
忘れもしない。
自分を何度も、何十度も、何百度も貫いた。
そしてその度、自分を絶頂に導いてくれた……
「ファナ、もう……よだれ垂らして。
 ヒューイの時より感じてるんじゃないのかい?」
きっと、それは無いだろう。
ヒューイが目の前に現れれば、きっと彼の元に走るのだろう。
だけど、このつかの間の自分を慰めるには、
その股間のおもちゃは、あまりに過ぎた物だった。
「ごめんなさい、ディアボロ、わたし、わたし……」
きっと、これは罰なのだ。
自分と、ディアボロは……たくさんの人間の心を壊してきた。
だから、滅ぼされた。
いや、自分はまだ……人としての心を壊されて、なお、忄生にしがみつき……
ディアボロを想いながら、ヒューイに貫かれている。
そして……それは、リリスも変わらない。
自分の心のつがいを失って、
ヒューイの身体を拒む力を失ってしまった。
だから、そんな二人は身体を重ねる。
失った彼の物で、つながりあう。
「ディアボロ……熱いよ、これ。こんな……すごいよ……」
リリスの、クリトリスが変化(へんげ)したそれは……
女のそれとは違う、熱さと、女を蹂躙する……確かな手応えを感じさせる。
「この感覚が……あんたの、『レーゾンデートル』、だったんだね……」
「ああっ、熱いの……熱い、ディアボロっ……!!」
最後の瞬間にはあんなに苦痛だった、あのペニスが。
自分の膣をかき回し、愛液を掻き出し、ヒューイに負けない早さで、
いや、それ以上の強引さで……ファナを追い詰める。
「あっ、熱い……でる、何か……出ちゃう、いくよ、ファナ……っ!!」
「ああっ、出して、熱いの、熱いので……私を満たしてっ!!」
きっと、それはかりそめの液体。
だけど、リリスのそれから熱い液体がほど走り、ファナの膣を、子宮を満たす。
卵管まで、きっと卵巣まで。
それは、孕むことはないとしても……
それでも、ファナの身体を熱く満たしていた。

「はあ、はあ……はあ……」
二人は知っている。
それが、結局は……ヒューイが戻ってくるまでの、つかの間の満足だと言うことを。
それだけで、自分たちを満たすことは出来ない。
だけど……
「ありがとう、リリス……」
「ううん、まだ……終わらないよ」
涙を舐めあい、身体を重ねる。
失った物を、埋め合わせあうために。

(続く)
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